「爆買い」の時代は終わった
「インバウンド=爆買い」のイメージはいまだに強いですが、すでに昨年には中国人のいわゆる「爆買いブーム」は終焉を迎えたと言われております。
爆買いをしなくなった中国人観光客は日本食や日本文化、または医療や教育といった分野にシフトしていると言われています。
また中国人観光客のように爆買いをしていなかった国の人々も、そのニーズを変えてきています。
「爆買い」が終了した理由
「中国人観光客の爆買いは終わった」と聞きます。これには、複数の要素が絡み合っているからでしょう。例えば、
- 中国富裕層だけでなく、リピーターや中間所得層が来日した
- 関税の上昇
- 円高・元安
といった点が挙げられます。
中国人観光客に関しては、これまで比較的富裕層が来日し、日本製の家電などを爆買いしていましたが、関税が上昇したり、「円高元安」になり、いまや中国人観光客も「モノ」の購入がメインではなく、「コト」に対してお金を使うようになってきています。
一方で、その他の国の観光客も「コト」消費が増えています。
「モノ」の購入だけでなく、「コト」の購入へ
では、「コト」の購入というのは具体的にどういうものを指すのでしょうか?
一言でいえば、
コトの購入とは「体験」のこと
です。つまり「体験」です。体験というのは形に残りませんが、人の記憶に残ります。モノは壊れてしまったり、ダメになってしまいますが、体験はいつまでもその人の心に残り、そして素晴らしい思い出となります。誰しも旅行に行けば写真を撮ったり、そこでしか体験できないことをしたりするのは当たり前です。
特に海外旅行であれば、そう頻繁に行けるわけではありませんので、そこでしか得られない体験をしたいと思うのはある意味自然な流れと言えます(というよりはこちらの方が自然かもしれません)。
様々な国から日本に旅行に来る人たちは、いったいどんな「体験」をしたいと思っているのでしょうか。
そこに、ミュージアムならではの特徴をアピールすることができます。
外国人観光客が満足する「コト」を考える
まず、日本的な「コト」と言えば、どんなものが挙げられるでしょうか。いくつか思いつくものを挙げてみましょう。
寿司作り | 小唄・三味線・琴体験 | 華道(生け花)体験 |
そば・うどん体験 | 折り紙体験 | 芸者体験 |
着物体験 | 盆栽体験 | 忍者体験 |
墨絵体験 | 和太鼓体験 | 相撲体験 |
書道体験 | 茶道体験 | 歌舞伎・能 体験 |
このように、「和」を感じさせる体験というのは、外国人観光客からすれば(それがオーソドックスでも王道でも)非常に素晴らしい体験、非日常を感じられる体験になります。
彼らの記憶や想い出に残る体験を提供することは、これからのインバウンドマーケティングにおける正しい戦略と言えるでしょう。
ミュージアムのインバウンドニーズも「モノ」から「コト」へ
では、ミュージアムができる「コト」や「体験」というのはどういうものがあるのでしょうか。
残念ながら「これなら間違いありません!」とお伝えできるものではありません。その理由は明確です。ミュージアムはそれぞれがとても個性的な魅力があるからです。
例えば、あるホテルが餅つきイベントをしていたとしましょう。
ではそれを貴館がやるべきでしょうか?
もちろん日本的なイベントなので、外国人観光客は喜ぶかもしれません。しかし、よく考えてみれば、ホテルでも体験できることをわざわざミュージアムに来て行なう必要があるのでしょうか?
この点をあまり考えずに「○○美術館が餅つきをやっているから、ウチもやるぞ」といった発想で進めてしまうケースがあります。
弊社でもインバウンドコンサルティングを行っていますが、こういった安易な発想が非常に多いのも事実です。しかし残念ながらこれはお勧めすることができません。
そうではなく、もっとも大切なのは「外国人観光客が貴館を訪れた時にしか体験できないコト」を提供することです。
ほかの施設や場所で体験できることは、ほかで行えばいいのであって、貴館でしかできないことを考えることが重要なのです。
そして特にミュージアムの場合には、「学習」や「教育」といった点において最も親和性が高いといっても過言ではないでしょう。
つまり「学ぶ、知る」という「体験」を最も提供しやすい状況が揃っていると言えます。
貴館ならではの「体験の提供」を考えることで、外国人観光客が貴館に来館する明確な理由を作ることができます。
「この体験は日本の○○に行かないとできないんだよ」
「○○するなら、この美術館しかないんだ」
「この間、日本に旅行したときに体験した○○がとても印象深かったから、他でもできないか調べてみたんだけど、どうやらあのイベントはあのミュージアムにしかできないようなんだ」
外国人観光客の口からこんなセリフが出てきたり、トリップアドバイザーなどの口コミでこういったコメントがつけば、貴館ならではの強みや特徴となり、それを中心にマーケティング活動を行っていくということも考えられます。
繰り返しになりますが、外国人観光客のニーズは、モノからコトへとシフトしています。つまり、ただ見るだけのミュージアムでははなく、旅行者自身が歴史や文化に入り込めたり、感じることができるような企画やイベントを考えましょう。
ミュージアムならではの「コト」体験を
こちらは 2017年2月のニュースですが、「体験型ミュージアム」はこれからもドンドン増えてくると思われます。
京都・源氏物語ミュージアム、体験型に改装へ 多言語対応も
http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20170209000063
アイデア次第では、さほど大きなお金をかけずとも、面白いアイデアや画期的なアイデアが出る場合もあります。「自分の館を良くしたい」「もっと色々な人に館を知ってもらいたい」と思うスタッフの方も沢山いらっしゃるでしょう。そういった方々と共にアイデアを出し実行することで、外国人観光客が喜ぶ企画やイベントを実施知ることができるのです。
「コト」消費や購買は、ミュージアムにとって大変親和性の高いものです。ぜひ貴館ならではのイベントを考えてみてはいかがでしょうか。