美術館、博物館、民族資料館、郷土資料館、物産館などが開催するさまざまな美術展では、伝統美術(日本画、水墨画、屏風絵、浮世絵、窯業、彫刻、陶芸、染色、漆芸(蒔絵、螺鈿)、建築、金工)や近代美術(日本画、油彩、版画、水彩、彫刻、陶芸、テキスタイル、シルクスクリーン、モダンアート)が対象となり、常に来場者の関心を集めています。
これらの多彩な美術作品に関しての表示物(解説文、挨拶文、作品名、プレートなど)の翻訳作業を行う場合、どんなところに注意すればいいのでしょうか。そして、どうすれば翻訳の品質は向上するのでしょうか。来場者への適切なアピールや、来場者の興味をひくことこそ、美術展の目的の 1 つであるはずです。当然ながら、そこに力を入れることは大切なミッションだと言えます。
美術展や展覧会の開催にあたり、必ず以下の表示物が存在しますので翻訳が必要になります。
例えば、主催者の挨拶では、美術展開催の意義、関係者(スポンサー、各国大使、各国文化関係官庁等)への謝辞、来場者へのメッセージ等が含まれます。わかりやすく、格調高い日本語もしくは英語に翻訳することによって会場の雰囲気を高め、品位ある美術展として位置づけられます。
作品名の翻訳では、作品と並んで作品名自体が主役級の扱いを受けます。そのため、日本の美術品の多くは、作品名に様式や作成技法、図案の種類等のすべてを含めた長い作品名をつけています。翻訳作業時には、それを来場者にどうやって表現するかがポイントになります。このポイントを理解して翻訳するのか、それとも原文をそのまま右から左に流すように翻訳するのかは、その翻訳会社および翻訳者の翻訳センスと豊富な知識がモノをいいます。
学芸員の方々も、美術展ではこの 1 つ 1 つの作品名の翻訳や技法の翻訳、図案の翻訳の品質が美術展そのものの評価を決定するため、大変慎重になりますし、常に来場者やビジターを意識し、単数か複数、大きさや色など、実際に出品される作品を見ながら、その作品を表現しているためのより良い翻訳文を作成します。
美術・アートの解説文というのは、難解かつイディオマティックであり、原文(日本語)で読んでも一般の鑑賞者はもちろん、熱心な美術ファンやアートファンにとっても理解しにくいものばかりです。そのため、翻訳作業の前に大切なことがあります。
なぜならそれは、わかりやすく洗練された解説文の翻訳が来場者やビジターの心を捉え、作品そのものの価値を高めてくれるものになるからです。
美術展や展覧会の開催にあたり、重要性がもっとも高いのがこの図録の翻訳です。展覧会の図録には、以下のものが含まれます。
これらの図録を正確に、かつ分かりやすく翻訳することは、引いてはその美術展そのものの評価にも直結しますので、もっとも翻訳に力を入れるべきドキュメントと言えるでしょう。
キャプションは、作品の作者やタイトルなどを表示しているものです。このキャプションを翻訳する場合には、実際の作品の外観や素材、大きさやその美術展に出品される作品データ(画像や所蔵先の施設提供の資料など)を確認し、作品名に最適なものを作ることで来場者にすぐに伝わるようにしなければなりません。
また、主催者が過去の美術展で使用した作品名の翻訳を使用することを望む場合は、それを尊重し、他の作品の作品名も違和感のない形で統一を図ることも求められます。全体の調和を損なうことなく、翻訳をすることがポイントです。
巻頭論文は、開催美術館や出品される美術品の所蔵館の学芸員、出品される作品や作家の研究家の執筆によるものがほとんどを占めます。そのため論文の内容は作家の出自や経歴、その芸術のたどった経緯、美術史だけでなく、広く世界史や日本史に関係する用語や表現が至る所に織り込まれ、さらにその芸術の特色や本質に至るまで多岐にわたります。ときにはきわめて観念的な芸術論、精神論に発展している論文も存在します。
例えば、海外に流出した日本の古美術品の帰国展に関する論文を翻訳する場合で考えてみましょう。
この場合、江戸から明治期の政治・経済情勢、著名な文化人の動静、他国との関係、芸術のパトロンとなっていた実業家や皇族の名前などが頻出することがあります。
翻訳作業にあたり、こうした背景情報を十分把握することが必須です。ときには、中国語やフランス語などの用語が当たり前のように語彙を形成していることも多くありますので、非常に多岐にわたる知識が必要とされています。
また、「赤蒔絵」、「灰釉」といった日本美術独特の技法についての説明では、それらの技法に使われる素材、薬品等の名称を正確かつ適切に把握し実際にその技法の理解をした上で翻訳しなければなりませんので注意が必要です。
芸術家、作家の精神や心栄えといった抽象的な性質の文章では、きわめて高度な知識や洞察力が必要であり、何を言いたいのか意味を理解するところからスタートしていきます。
例えば、 日本語では漢字の数文字の表現で済むものが、英語に翻訳すると、10 ワード以上になることもあります。この場合に大切なのは、文章の意図を完全に理解することですが、そのためには、論理、因果関係や事の順番を原文とは異なった形で整合・再構築しなければなりません。ここにもまた論文翻訳の難しさの 1 つがあるのです。
また非常に質の高い論文の場合には、「通じる」、「通じない」の低い翻訳レベルで作業ではなく、論理的でわかりやすい、格調の高さを損なわずに翻訳することで、原文のレベルが高い文章は、翻訳後もより一層品質の高さを維持することが出来るのです。
言うまでも無く、この「格調の高さ」というのは、一朝一夕に実現するものではありません。翻訳会社および翻訳者の日々の研鑽とたゆまぬ努力が形成しているものです。だからこそ、安心して翻訳を任せることができるわけです。
例えば、同義語の中からより適切で品位のある言葉を選択したり、論文の随所でどの程度の硬い表現を用いるか、どの程度の口語的な表現にするかなどのバランス感覚も求められます。まさに、このバランスが論文翻訳の格調を高め、翻訳の品質を確かなものにし、貴社の論文を他の追随を許さないだけのレベルまで押し上げることになります。
このように、論文の翻訳だけをとっても、細部にまで徹底的にこだわり、原文の意図をしっかりと伝えるための品質維持および向上を可能にしております。たゆまぬ努力により、弊社では、UNESCO(ユネスコ)を始め、国内外の研究機関、博物館、美術館に関係した論文等を手がけた翻訳実績を誇っております。
論文翻訳サービスについては以下の Web サイトもご覧ください。
美術展の展名の翻訳は、日本語と英語で併記されることが多くなっています。そのため、原文に沿いつつ美術展名として通りがよく、覚えやすく、伝わりやすい訳文を作ることで来場者への訴求力をアップすることができるのです。
キャッチフレーズの場合、言葉にリズムがありインパクトを与え、かつ上品なものにすることが必要であり、なにより言葉に関するセンスが必須のものとなります。
カタログやパンフレットなどの情報誌に掲載する紹介文や宣伝文は、美術展の内容を伝え、読者の関心や期待を呼び起こし、美術展への来場や期待を高める役割を持っています。そのため、来場者に対して平易で簡潔、短い文章でその展覧会のイメージを持たせると同時に、論文や会場に掲示される説明文と同じトーンを維持し、統一感を保っていかなくてはなりません。
弊社では、大学、企業、文化施設等で、数々の産業および出版翻訳に携わってきた確かな経験から、言葉のプロフェッショナルとして品位と造詣を感じられるキャプション、紹介文、論文等を作成しています。多くの来場者を呼び込むためのキャッチーな翻訳、そして作品の鑑賞時にもご満足頂ける翻訳を中心として貴社の美術展を成功に導く翻訳サービスをワンストップでご提供いたします。
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