写真集や画集などの作品集では、代表的なものとして以下のものがあります。
これらの作品集はどのように翻訳するのがいいのでしょうか。翻訳のポイントについてご説明します。
写真集や画集は、多くの場合、以下のような構成になっています。
このように写真集や画集の構成が分かれているため、各セクションの目的に即した翻訳が必要となります。それぞれのセクションにおいて、翻訳する際のポイントを以下にご説明しましょう。
作品集(表紙)のタイトルには、作者もしくは出版社の思いのこもった名称が採用されることが多くあります。単に「○○作品集」という命名ではなく、例えば「静謐の詩情」、「旅する心」、「美の道程」といった題名です。これらはまさに「作品集の顔」とも言える文言となります。
そのため、作者や出版社の意図を理解して原文のニュアンスや雰囲気に即した情感のある題名を考案し、翻訳していくことが求められます。
巻頭辞・序文は、作品集全体の入り口となる文章であり、作品集全体を紹介するとともにこれから閲覧する読者に期待を膨らませる役割を持っています。
初めてその作家・作品群に接する方にも分かりやすい内容とし、本格的な作品の解説や芸術論についての記述は、できるだけ解説文等にゆずり、この後に続く解説文、論文を読むための下地を作るという目的に沿って、解説文→論文と有機的に結びつくように統一感を持たせていくことが求められます。
また、スマートで軽い雰囲気の散文のような趣のある巻頭辞の場合や、本格的な作品集としての格調や権威を表現している原文の場合とでは、それぞれに適した表現や用語の選択を心がけることで巻頭辞や序文としての役割を果たすことになります。
それぞれの状況を理解して翻訳することによって、原文の意味を忠実に分かりやすく読者に伝えることが可能になるのです。
寄稿文や解説文などのドキュメントの翻訳では、原文が文学的か、または学術的な内容がメインとなっていることがあります。
その上で、絵画もしくは工芸技法、使用されている画材や素材、関連している地名や人名などを把握し、調査して分かりやすい翻訳を心がけます。
具体的な翻訳のポイントは、以下になります。
このように翻訳を行なうことで、読者を引き込み、訴求力のあるドキュメントを作ることができるのです。
1 人の芸術家、アーティストの作品集の場合、本人の寄稿文や挨拶文が記載されることが少なくありません。当然、制作に注がれた情熱や苦労、長年の取り組みやアートに対する造詣を反映していますので、どうしても文章が難解かつ観念的になる傾向があります。
イディオマティックな表現や抽象的な表現、またアーティスト本人でなければ正確には理解しにくい文章も多くなります。この場合、翻訳作業前にきちんと内容を理解し、文章を論理的に再構成していきます。必要であれば、関連する資料のご提供をお願いしたり、芸術家やアーティストご本人に文意を確認させていただくこともあります。なぜ弊社ではここまでするのかといえば、それは、原文に込められた作家の思いに少しでも即した翻訳を目指すことこそが読み手に情熱までをも伝えられるからです。
伝統芸術作品において、著名な博物館や美術館の所蔵にある作品の名称は、公式の資料で使用されている作品名を調査の上で使用します。複数の先例がある場合は、今回の作品集にもっともふさわしいスタイルに即した作品名を採用することになります。それにより、作品そのものを表現することになり、読者へストレートに訴えかけることが出来るからです。
また、古美術、日本美術の場合には、
といったものや、
のように、作品の素材や製作技法がそのまま作品名になったものが多数存在します。
著名な博物館や美術館の作品名表記に使われているスタイルを踏襲し、技法と素材の訳語を盛り込んで翻訳することが大切なポイントです。
さらに、読者のことを最優先に考え、可能な範囲で簡潔な作品名にすることも大切なポイントです。現代美術の場合は固有名詞が使用されたり、より観念的な言葉が使用されがちですが、できる限りそのイメージに即した単語もしくは単語の組み合わせにより、作品名として適切な名称を考案して翻訳します。
年譜は、出身、学歴、芸暦、受賞暦、作品の所蔵先などを分かりやすく簡潔にすることを優先するため、翻訳作業においても、年譜独特の文体の使用が求められます。
地名や学校名、芸術団体名、展覧会名、美術館名などの固有名詞は、存在する公式英語呼称を調査し、年譜としての機能を最大限に生かせるようにしなければなりません。
このように、写真集の翻訳でも画集の翻訳でも、しっかりと文意を理解し、また固有名詞などは調査を行なったうえで、アーティストの意図から外れることなく、1文1文に魂を入れるような気持ちで翻訳を行なっています。
だからこそ、ただ「翻訳してあればいい」「英語になっていればいい」というレベルには留まりません。「どう翻訳すれば伝わるのか?」 という1点に集中して、お借りした原文を翻訳しております。
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