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「文化財の英語解説のあり方について」レポートを読む

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先日、文化庁と観光庁が、「文化財の英語解説のあり方について」というレポートを公開しましたね。すでに弊社発行のメールマガジンではお伝えしておりますが、この記事でも改めて取り上げてみたいと思います。

レポートは、以下のリンクからダウンロードできます(PDF が直接開きます)

http://www.mlit.go.jp/common/001142178.pdf

 

弊社は日常的に美術館様、博物館様の翻訳を承っておりますが、その中で必ずと言っていいほど出てくるキーワードが「高い専門性」です。このキーワード、実はお客様から仰っていただくことが多いのですが、これはつまり、用語へのご不安があるからこそだと推測できます。

お客様は、「この会社に任せて大丈夫なのか?」といったご不安をお持ちでいらっしゃるわけですが、これはある意味、どの分野でもあることですし、弊社としては「自分たちのベストを尽くす」しかありません。しかしそれでは心許ないと思いますので、弊社のこれまでの翻訳実績だけではなく国が発行しているレポートをご紹介させていただきます。

文化庁や観光庁が整備したレポートを解説することで、貴館によってより安定した品質を確保していただく一助となれば幸いです。

今回はこのレポートを弊社独自の観点でまとめてみたいと思います。

そもそも、本レポートの対象である「文化財」とは何か

まずはじめに、今回のレポートはミュージアム(美術館や博物館)ではなく「文化財」という括りで記載されているところに注意しましょう。

その「文化財」とはいったい何を指すのか、その定義から見ていきたいと思います。

Wikipedia「文化財」

広義では、人類の文化的活動によって生み出された有形・無形の文化的所産のこと[1]。「文化遺産」とほぼ同義である。詳細は文化遺産を参照。

 

さらに、「文化遺産」とは何か、こちらも確認しましょう。

Wikipedia「文化遺産」

文化遺産は、広義では人類の文化的活動によって生み出された建造物遺跡美術品音楽演劇などの有形(不動産・可動文化財)・無形の文化的所産のことをいう。各国政府および国際機関は、文化的所産の中でも学術上、歴史上、芸術上等の価値が高く、後世に残すために保存等の措置が取られるべきものを、特に「文化遺産」あるいは「文化財」と位置づけ、条約法律条例等による文化遺産保護制度の対象としている。

 

大まかに文化財=文化遺産という定義は理解できました。さらに、文化財は「有形文化財」と「無形文化財」に分けることができます。

Wikipedia 「有形文化財」

有形文化財は、建造物絵画彫刻工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産(これらと一体をなしてその価値を形成している土地、工作物などを含む場合がある)および考古資料、歴史資料を指すと定義されている。

 

Wikipedia「無形文化財」

無形文化財は、演劇音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産であると定義されている。文部科学大臣は、無形文化財のうち特に重要と判断されるものを重要無形文化財に指定することができる(第71条第1項)。

 

さらにそれぞれ、重要有形文化財、重要無形文化財などがあります。ただし本記事の内容から離れてしまうため今回は割愛します。

ここから判断できるように、通常、美術館や博物館で取り扱うものは基本的に有形のものであり、「文化財」または「文化遺産」という言葉で一括りにしてしまうと、取り扱っていないものまで含んでしまう可能性があります。

しかし本記事の目的は、このレポートの内容を理解し、ミュージアムの業務に有効に生かすことですから、ミュージアムにとって必要な箇所とそうでない箇所があるということを把握しておけば十分でしょう。

 

ミュージアム(美術館・博物館)としての対応

本レポート全体にわたって、これらは「すでにある程度、外国人観光客を集客できている」というのが前提のようにも感じました。

実際に集客そのものがうまくいっていない(日本人観光客も減っている)、期待した効果が得られないという館もあると思いますので、草の根レベルでも施策を考えないといけませんし、全国のミュージアムの皆様は、それぞれの地域やインバウンドの進捗状況は違います。

すべて鵜呑みにはできませんが、参考にするところは参考にしていただければと思います。

今回は集客面も問題なしという前提でさらにレポートを読み進めていきたいと思います。

翻訳すればうまく行くのか?

このレポートでは「翻訳の仕方、視点」といった部分が重点的に解説されています。

例えば、以下のような項目があります。

訪日外国人旅行者にとって十分に理解できる内容となっているか。

 

これは大変重要な視点です。なぜなら「読み手は誰か?」を意識しなければ、適切な翻訳はできないためです。

このレポートの中にある例「江戸時代」は「外国人観光客」からすれば、自分たちの西暦ではいつのことなのか?ということを合わせて理解してもらわなければなりません。

そのため、合わせて西暦も記載する必要があります。具体的には以下になります。

日本語:江戸時代

英語:Edo Period(1603~1868)

と補足する必要があります。

またレポートにはありませんが、美術館や博物館の翻訳の場合には、「作品画像」は不可欠です。

作品画像がなければ、翻訳することができないといっても過言ではありません。例を出して考えてみましょう。

例えば、ある絵画作品の中に鳥がいるとします。

英語に翻訳するときには、それが1羽なのか2羽なのかによって単数形と複数形に変わってしまうのです。つまり作品画像がないと正確に翻訳することができないというのは、想像に難くないでしょう。

このように、翻訳ひとつでもレポートにあるように補足したり、言語の文法構造の違いなどを意識して翻訳しなけれれば外国人観光客には伝わらないということです。

単純に日本語を英語に置き換えるような翻訳では、伝えたいことの半分も伝わらない事態になります。つまりそれは彼らにとって、「また来たい」と思う美術館や博物館ではないということです。

レポートでも記載していますがこのあたりを意識しているのか、そうでないのかは、翻訳の品質と同様にかなり重要ですので、翻訳会社に依頼する際は十分注意しましょう。

中小規模館としてのインバウンド対応

きちんとインバウンド集客できている前提での中小規模館の場合、何から手を付けていけばいいのかを考えなくてはなりません。予算は無尽蔵にあるわけではなく、また訴求力の最も高い(と思われる)ものに投資しなくてはなりません。

これはミュージアムごとに地域性やインバウンド対応の進捗度合いによって異なるためここで論じることはできませんが、結局のところ、できることから進めていくしかありません。先日の弊社セミナーでお伝えしたように、正しいプロセスを計画し、実施していただければと思います。

ただひとつはっきり言えることは「知ってもらうこと」が先で、「その上での館内対応」ということになるでしょう。

ちなみに、このレポートの後半では、神社や博物館などの事例も掲載されておりますので参考にしてみてはいかがでしょうか。

また、弊社でも「美術館専門の外国人観光客 集客サービス」として各種のサービスをご提供しております。

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まとめ

美術館や博物館では特に翻訳の品質は重要度が高くなります。それは何も外国人観光客向けだから、という理由だけではありません。

同じく、海外の専門家や研究者が図録や論文を読んだりするのです。

そこでしっかりした翻訳が出来ていないと、評価そのものが下がってしまいますし、また、作品の貸し借りといった点でも不利になるでしょう。

プロの目にも外国人観光客にも納得してもらえるような「質の高い翻訳」を作るためには、このレポートが指摘する視点が不可欠なのは間違いありません。ただ「英語になっていればいい」という考え方では、一生懸命集客しても、貴館の良さや素晴らしさを伝えきれないために、中途半端になってしまう恐れがあります。

美術館や博物館様にとって、作品を多くの方に見てもらうことは大変重要な命題だと思います。私たちはその点にフォーカスし、できるだけ「相手に伝わる」翻訳を目指していきたいと考えております。

今回の文化庁、観光庁のレポートが翻訳の質を上げるためのきっかけになれば、外国人観光客の満足度もさらに向上することは間違いないでしょう。ご興味があればご一読されることをお薦めいたします。

レポートは、以下のリンクからダウンロードできます(PDF が直接開きます)

http://www.mlit.go.jp/common/001142178.pdf

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