インバウンド対策では絶対に外せない「多言語翻訳」
ここ最近、特に多くの美術館・博物館様の広報担当者様にお話を伺いする機会に恵まれていますが、お話をお伺いすればするほど、「翻訳」(特に英訳)の重要性を感じています。
今回は、ミュージアム(美術館や博物館)にとっての翻訳というものが、時には周囲からの評価すら変えてしまうものであり、そして増加する外国人観光客に対しても、「良い翻訳」は有効なコミュニケーションツールであることをご説明します。
美術館や博物館にとって翻訳の品質は「良くも悪くも」致命的
すでに分かり切っていることですが、ミュージアム(美術館や博物館)にとっては、翻訳の品質は非常に重要であり、ある意味では致命的な要素を孕んでいるといっても過言ではありません。
それは一体どういう意味でしょうか?
これまでに失敗を重ねてきたミュージアムご担当者様なら理解できるかと思いますが、「作品を理解していない翻訳」は、いくつかの重要なエラーを引き起こします。まずはそのエラーをご説明しましょう。
翻訳会社に依頼したにも関わらず、翻訳のチェックへの負荷が大きい
これは想像に難くありませんが、「品質の悪い翻訳」は、その後のチェックが大変です。まったく分かっていない翻訳者が作業すればそうなりますが、それは2つの原因が考えられます。
美術やアートを専門としていない、知識・経験が浅いが故に翻訳の品質をコントロールできない
これは比較的見極めやすいかもしれません。どんな品質で翻訳が納品されるのかは、無料トライアルや実績等で判断するしかありません。営業マンがいくら「大丈夫です」「任せてください」と言ったところで、そこには何の説得力もありません。
なぜなら翻訳するのは翻訳者であり、営業マンではないからです。また品質をコントロールするのも営業マンではなく、コーディネーターやレビューア、チェッカーなどの制作部隊だからです。
そこを見ぬくことは簡単ではありませんが、上記のようにトライアルをしてみたり、公開可能な過去の翻訳実績などを見せてもらうことで、どんな翻訳が納品されるのかは具体的に想像しやすくなります。
そもそも美術・アート分野を専門としていない翻訳者を使用している
またこれはなかなか難しいのですが、翻訳者が美術・アート分野ではないというケースも稀にあります。これはさすがにすぐに分かってしまいますが、翻訳というのは様々な分野に分かれていて、またそれぞれに専門知識を持ったプロの翻訳者が存在します。
よほどのことがない限り、どんな分野でも究めるのは難しいわけで(法律分野も IT分野も金融分野も医療分野も対応できますという人は稀)、そういう点では美術やアートという分野も極めるには膨大な時間がかかります。
つまり歴史や文化といった背景や、技法や作家の知識などの知識を求められるわけですから、時間はいくらあっても足りないくらい、奥が深いのです。
にも関わらず、そうでない翻訳者をアサインしてしまうと、やはりそれは「満足できない翻訳」になりかねません。
※このあたりは翻訳会社側の選定条件やプロセス、評価基準が大いに関係してはきますが、そもそも異なる分野の翻訳者をアサインしていること自体、翻訳者の選定基準も何もないと言っているのと同じです。
世界中のミュージアムに配布される翻訳もある
これは意外と見落とされがちなのですが、翻訳は何も外国人観光客のためだけにするのではありません。
例えば、図録の翻訳は外国人観光客、日本人観光客、研究者なども読みますが、各国のミュージアムに配布することもあります。
図録は作品画像、解説、論文などで成り立っており、その解説を読むことで各国のミュージアムは、将来、自分たちの展覧会で作品を使うかどうか(借りるかどうか)を判断する場合もあります。
もしその資料としての価値を無視し、翻訳をすれば、海外との提携といった面にも悪影響が出てしまうかもしれません。
ミュージアムの将来の可能性を小さくしてしまう翻訳だけは避けなければなりません。
口コミの力
インバウンドという側面から見れば、口コミの力は私たちが想像するよりもずっと大きいということです。特にネット(SNS等)の拡散力、影響力は目を見張るものがあります。
トリップアドバイザーなどの旅行系サイトでは、口コミ評価によって旅行を検討している人にとっては大変貴重な「生の声」です。
行ってみたいと思っているが、実際はどんなところなのか、行ったことのある人はどんな感想を持っているのかなど、口コミは非常に便利です。
そこに書かれていることをコントロールすることはできません。しかしながら、口コミの力を「正の方向」に使うためには、出来ることと出来ないことを分け、ミュージアムでできることを精一杯行うしかありません。
そのひとつが多言語翻訳への対応ではないでしょうか。
このように、ミュージアム(美術館や博物館)にとって、翻訳というのは一般の観光客と同業のプロフェッショナルとの両方からの評価を受けることになるわけで、その点において翻訳の品質というのは、良くも悪くも致命的な内容を抱えているのです。
これは、他のインバウンドプレーヤーよりも重要度が高くなる傾向にあり、「(一応)多言語対応している」という状態が許されないということを意味しています。
まとめ
ミュージアム(美術館や博物館)にとっての翻訳は、あらゆる角度から検証したときに、様々な立場のプレーヤーによって評価されるものです。ましてやそれらは作品そのものの評価すら変えてしまう力を持っています。
これをネガティブにとらえるか、それともポジティブにとらえるかによってミュージアムの将来に少なくない影響を与えるのではないでしょうか。
余談ですが、これは個人アーティストにも同じことが言えます。海外で活躍するアーティストになればなるほど、海外での個展開催などにおいて、自分のプロフィールや作品解説がいかに重要なものかを理解されています。
そのため弊社では個人アーティスト向けには「アーティスト向け 海外出展 翻訳サポートプラン」もご提供しています。
http://art.trivector.co.jp/artist_supportplan.html
必要以上にコストをかける必要はありませんが、この「翻訳の重要性」を理解し把握しているミュージアム(美術館や博物館)の担当者様は、以下のようにおっしゃっています。
世界に発信することになるのだから、恥ずかしくない英文にしなければならない。
このような発言は、過去に苦いご経験をされた方であり、「翻訳の怖さ、翻訳の重要性」を知っている方々です。
こういったコメントをいただく度に、弊社では「だからこそ、最初の時点、つまり自分たちでコントロールできる時点で、『翻訳は独り歩きするという事実』を踏まえて作業することがとても重要だ」と認識しています。
自らの手元にあるうちに翻訳の品質をコントロールし、むしろ良い影響を狙っていくことが重要です。
上述の、一見ネガティブで、リスクにも感じられる事象は、うまくやれば自分たちでコントロールできる範囲を広げてくれるのです。
翻訳会社の選定の際、翻訳をご発注される際にはこういった影響度合いを考慮にいれて依頼するようにしましょう。