公益財団法人 紙の博物館
東京都北区飛鳥山にある「紙の博物館」は、紙に関する古今東西の資料を幅広く収集・保存・展示する世界有数の紙専門博物館です。近年、増加傾向にあった訪日客に対応するため、2016年にトライベクトルのインバウンドセミナーを受講。その後、1年間のコンサルティング契約を通して多言語サイトの制作やイベント開催などさまざまなPR、マーケティング活動を実施し、入館者数の大幅アップを実現しています。
住所 | 東京都北区王子1-1-3(飛鳥山公園内) |
電話番号 | 03-3916-2320 |
開館時間 | 午前10時~午後5時 |
休館日 | 月曜日(祝日の場合は開館)、祝日直後の平日、年末年始 |
入館料 | 大人300円(240円)、小中高生100円(80円) |
※( )内は20名以上の団体料金 |
紙の博物館 学芸部長 | 西村 博之様(左) |
紙の博物館 学芸員 | 小嶋 昌美様(中央) |
紙の博物館 事務部 | 荒 千惠様(右) |
日本語と英語のみだった情報発信
西村博之(以下、西村):以前から当館にも海外からの入館者の方がちょくちょくいらっしゃっていましたが、目立って増えてきたのは2014年。日本の「和紙:日本の手漉和紙技術」がユネスコの無形文化遺産に登録された頃でしょうか。王子にある当館をわざわざ目指して来場してくださる方が増えました。私自身、館内で見回りをしているときに海外からのお客様にお声がけすると、どうやら多くの方が「紙」というよりも「和紙」に関心があるようでした、
小嶋昌美(以下、小嶋):これまで当館では、とくに訪日外国人向けのPRは行っておらず、館内も一部で英語表示があるのみでした。今後は多言語による対応はもちろん、ホームページやSNSなどでも情報発信していく必要があると話し合っていたところ、ちょうどトライベクトルさんのセミナーを受講することとなり、一年間のコンサルティングをお願いすることになりました。
“ブレスト”で見えてきた課題と目標
小嶋:第1回目の打ち合わせは、2017年の2月頃。当館の会議室にトライベクトルの矢柳代表をお招きして行いました。最初に代表がお話しになったのが「現状把握と目標を定めましょう」ということ。昨年まではどういう状態であるか、そしてこれからはどういう人をターゲットに、何人くらいに来館してもらいたいかを明確にしなければ、今取り組むべき課題も見えてこないということでした。
荒千恵(以下、荒):新たなターゲットを決めるにあたり、ブレスト(ブレインストーミング)も行われました。一人20案をノルマに、当館の来場者を伸ばすためのアイデアをみんなで出し合ったのですが、人によっていろいろな視点や考え方があることを知り、すごく新鮮でした。
小嶋:その結果、決まった新しいターゲットは「20~30代の女性」。これまで当館の来館者は、どちらかというとシニアや団体がメインでしたが、今の若い女性は紙の和小物などが好きな方も多いため、そういう方にも来ていただけるPRをしていくことに話がまとまりました。
西村:また、年間の目標来館者数は3万5,000人に設定。ホームページと館内パンフレットは日本語・英語・韓国語・中国語(簡体字/繁体字)のそれぞれ5言語で制作することになり、あらゆる世代や国籍の方にとって「見やすい」「分かりやすい」ことを最重要課題としました。
日本らしさを意識した季節限定のイベントを開催
小嶋:ブレストによって課題や目標が明確になったことで、すぐ実行に移したのが館内イベントです。これまでも当館では定期的に「紙すき」イベントを行っていましたが、少し視点を変え、例えば雪の結晶の模様づけができるクリスマス限定の「紙すき」イベントや、竹紙の短冊を使った七夕イベントなど、「和紙」や「日本らしさ」をアピールした催しを定期的に開催しました。
荒:イベントを増やしたことで、これまでほとんど更新されていなかったSNSでの情報発信も活発になりました。その影響か、イベント目当ての来館者も徐々に増え……館内表示やホームページでの案内だけでなく、外に向けての情報発信がいかに重要かを再認識させられました。
小嶋:イベントは予約制ではなく自由参加のため、来館者なら誰でも参加できます。興味深いのは、海外の方はほぼ100%参加してくださること。ご夫婦やカップルでご来館くださるケースが多いせいかもしれませんが、海外の方はより「体験」そのものを楽しまれる傾向にあるのかもしれません。
多言語によるホームページやパンフレットを作成
西村:ホームページを多言語化するうえで苦労したのは、やはり「言葉選び」の問題。例えば「江戸時代」といっても、日本人なら当たり前にイメージできますが、外国人にはよくわかりません。日本人向けだった情報を、ただ翻訳するだけではダメなのです。
小嶋:基本情報は学芸員が日本語で作成し、それを英語・韓国語・中国語(繁体字・簡体字)に翻訳するのですが、やはり翻訳者によって表現のニュアンスは変わります。英語に関しては海外経験の長い西村部長にチェックしてもらえますが、その他の言語については調べようがありません。しかし、トライベクトルさんの翻訳はネイティブと日本人によるダブルチェックもしてもらえるため、安心してお任せすることができました。
荒:館内パンフレットでこだわったのは、多言語版にはフロアマップを掲載したことです。当館の建物は内部構造が複雑なため、海外の方が一人で見学しても迷わないよう配慮しました。また、情報過多にならないよう、本当に伝えるべきことをシンプルに伝えています。
目標来館者数の3万5,000人を突破!
西村:トライベクトルさんのコンサルティングがスタートしてちょうど1年。おかげさまで、年間来館者数も3万7,244人を記録し、当初の目標を大きくクリアすることができました。
荒:多言語版のパンフレットができたことで、海外の方だけでなく、在日の外国語学校の方々などに企画展などをご案内できるようになったことも大きいです。いま、在日外国人インフルエンサーの情報を頼りに日本観光をする訪日客も多いので、そういった効果も期待しています。
小嶋:つい先日も、館内にフリーWi-Fiも実装されました。館内は企画展などの個人作品などを除き基本すべて撮影OKなので、来館者の方にもSNSなどでどんどん情報発信していただけたらと思っています。
2020年に向けた今後の展望
西村:いま当館は2020年に向けて本格的にリニューアルを行っている最中です。限られた予算や時間でどこまで実現できるかはわかりませんが、来館者が紙のことを楽しく学べて、その結果、紙に対するポジティブなイメージを醸成していける場所になれればと思っています。
荒:私はふだん事務部として受付やショップの担当もしていますが、それは来館者の反応が最も身近に感じられる場所でもあります。これから物販のさらなる充実を図りながら、来館者の学びや体験を、活用提案へとつなげられるような館内づくりをめざしていきたいです。
小嶋:博物館はその国の文化や歴史を知ることのできるとても素敵な場所です。日本には豊かな紙と木の文化がある。だからこそ、もっと「Cool Japan」的なものに出会える場所にしていきたいし、日本の方も自国の文化を改めて知ることのできる場所になれればいいなと願っています。
導入効果
コンサルティングから多言語翻訳、Webサイト制作と着実にインバウンド対応を進めている紙の博物館様。主に3つの効果がありました。
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まとめ
弊社のインバウンドセミナー(無料)にご参加いただき、その後コンサルティングプランをご利用いただき、二人三脚で進めてきたインバウンド対策ですが、一定の成果が出始めていると感じています。
オリンピックだけが目標ではありませんが、ひとつのベンチマークとしてミュージアムの対応というのはとても注目されているのも確かです。
弊社では「ミュージアム専門のインバウンド対策サービス」をご提供していますので、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
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