年々増加する外国人観光客
2015年に引き続き、2016年も外国人観光客の入国数は減ることがありません。
2015年は年間で19,737,400人もの外国人観光客が日本に押し寄せています。
参考:日本政府観光客(JNTO)
国籍/月別 訪日外客数(2003年~2016年)
http://www.jnto.go.jp/jpn/reference/tourism_data/2003_2016_tourists.pdf
日本政府も積極的に民間企業とともに誘致していますので今後もこの流れは変わらずに外国人観光客は増加するでしょう。
ホテルは予約がとりにくくなっているというニュースも耳にするようになりましたが、数年後にはニュースにすらならず常態化するかもしれません。(法律的には色々ありますが)AirBnB のようなサービスもどんどん増えてくるかもしれません。外国人観光客が増えることによって新しい市場、新しいサービスの生まれる余地が出来上がっています。
1,970万人の内訳
すでに2020年までに2000万人の観光客を、といっていた目標は2015年には1,970万人と肉薄しました。2020年を待たずとも今年には達成し、超えるのではないでしょうか。
そこには大きなチャンスがありますが、数字だけで判断してしまうと見誤ってしまうこともあります。まずは内訳をみてみましょう。
やはりまだまだアジア圏からの観光客が多い状況です。
この状況からさらに一歩進め、欧米圏の観光客を集客することが重要になります。その理由は大きく2つに分けられるでしょう。
経済環境の変化等のリスクヘッジ
何事もそうですが「バランス」は重要です。今後3,000万人、5,000万人と外国人観光客を増やし観光立国として進んでいくのであれば、アジアだけ、ヨーロッパだけというのではなく世界中からあまねく集客できるようにしなければなりません。
もちろん簡単ではありませんが、この努力を常に行わなければ、万が一ある国に依存しているような状況になれば、たちまち日本経済にも大きな影響を与えてしまうからです。
お金を使ってもらう必要性
「爆買い」が代名詞になってしまっていますが、実際に大きなお金を使うのは中国人旅行者だけではありません。オーストラリア人なども長距離の移動のために多くのお金を使うという統計も出ています。
これからは、「どうやってお金を楽しく使ってもらうか」を考える必要があります。そして、それは美術館や博物館にとっても大変重要なテーマになります。
外国人観光客は美術館に対して何を望んでいるのか?
では、ここで質問です。
「美術館・博物館に来る外国人観光客は、いったい何を期待して来館するのでしょうか?」
この問いに対する答えこそが、今後美術館や博物館が取り組まなくてはならないものになるのです。
この答えは簡単に出すことはできませんが、順番に考えてみることで予測できる部分もあります。
旅行の目的
美術館や博物館だけでなく、そもそも人間はなぜ旅行をするのでしょうか?そしてなぜ旅行好きな人が多いのでしょうか?これは人種問わず、旅行が好きな人が多いのです。だからこそフランスは観光立国1位として多くの外国人観光客を招いているのです。
最初の質問とリンクしますが、ここでの質問は、
「どうして人は旅行するのか?」
です。ここから順番に考えてみるとよいでしょう。
なぜ日本に来るのか?
人が旅行する目的がわかったら、今度は次の質問です。
「その上で、旅行先にどうして日本を選んだのか?」
これも色々な答えがあるでしょう。外国人観光客に直接聞いてもいいかもしれません。そして次が最後の質問です。
なぜ日本の美術館に来るのか?
「いったいなぜ、日本の美術館しかも貴館に来るのでしょうか?」
この「なぜ」を突き詰めて考えていくことで、自分たちがどう見られているかも発見することができます。そしてこの答えはそれぞれの美術館、博物館によって違うのかもしれません。
一般的な答え
この記事の最後になりますが、一般的な答えとしては「非日常を体験したい」というのが多いでしょう。
当たり前といえば当たり前の答えです。私たちが海外旅行に行くときにも、意識的にせよ無意識的にせよ、普段とは異なる場所は刺激的です。それが非日常であればあるほど、エキサイティングで、強く思い出に残るものになるでしょう。
でも考えてみてください。「非日常」を作るのはとても大変なことです。なぜなら日本人とっては「日常」だからです。日常の中にいる人が「非日常」を作り出すには、様々な視点が必要になります。
「そんなところに興味があるの?」と外国人を見て思うことはあるでしょう。その視点を持つのは簡単なことではありません。当たり前すぎて気づかないということがあるからです。
いかに非日常を作り出せるかは大きなポイントとなるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「インバウンド」という言葉に踊らされることなく、また人口の内訳や観光ルートなどをしっかり把握し、そして「自分たちは何をすべきなのか」「何をアピールするべきなのか」を考える必要があります。
特に美術館や博物館はそれぞれ独自の作品を所蔵していたり、また地域性や周囲との連携なども状況が異なります。
それらを無視して「みんながやっているから」という安易な選択肢に流されることなく、しっかりと地に足を付けてコツコツと外国人観光客対応をすることです。
「また来たい(期待)」と思ってもらえるような美術館や博物館にするために、貴館だけの「なぜ」を押さえておくことが重要なのです。