ここ数年「インバウンド」と言えば、外国人観光客が来日し、日本全国を旅し、消費し、観光するという一連の流れを指していました。「インバウンド」という言葉は 2015年には流行語候補にもランクインしています。
当然、世間一般的にも「インバウンド=外国人観光客」として認知されています。しかし、実はその前から「インバウンド」という言葉は、もうひとつの業界でもうひとつの大きな意味を持っていた(持っている)ことをご存知でしょうか。
もうひとつの「インバウンド」とは
では、もうひとつの「インバウンド」とはどんな意味なのでしょうか。
答えは IT 業界にあります。IT、特にネット関連では「インバウンド」という言葉がずっと前から使用されていました。
その意味は、概ね以下のようになります。
企業のマーケティング施策のひとつとして、ネットを活用(発信)し、潜在的な顧客の疑問や興味の沸くコンテンツを継続的に発信することによって、Google 等のネット検索でロングテールを含む上位表示を可能にする方法のこと
お客様にとって役に立つコンテンツを発信し続けることで、Google から「この Web サイトはユーザにとって役に立つことが書いてあるから、任意のキーワードで検索されたら上位表示させよう」という評価をもらうことができます。
検索結果に上位表示されれば、問い合わせや興味のある人が閲覧し、増えていきますから、結果的に来館者数が増えたり、企業でいえば売上が上がったりするわけです。これらは「コンテンツ SEO」とも呼ばれています。
これらの一連の流れを「インバウンドマーケティング」と呼んだり、「コンテンツマーケティング」と呼んだりもします。
(ちなみに、電話営業などはこちらから電話をかけていくのでその反対語として「アウトバウンド」と呼びます)
いずれにしても、インバウンドとは、顧客に見つけてもらうための活動、顧客を呼び寄せるための活動と言えます。
そして、ミュージアムは今こそ、この「インバウンドマーケティング」をもっとしっかり取り組んだ方がいい理由をお伝えします。
理由(その1)海外へのアプローチはネットが一番
大規模美術館や博物館にはある程度の予算がありますから、大きな広告代理店をはじめとしたネットワークを駆使して、大規模な広告宣伝を行うことができます。例えば TVCM もそうですし、ラジオ、専門番組なども使うことができます。
それだけの投資をしても回収できる見込みがあり、実際に来館者も相当数がくるからですね。なお、これは日本国内だけでなく、出そうと思えば海外にも広告を出すことはできます。
ただ、中小規模館はそうはいきません。限られた予算の中で効率的に展覧会をアピールし、来館者を増やさないといけないのですが、そこで役に立つのはやはりインターネットです。
特に海外向けに Google Adwords などのリスティング広告を出してみたり、動画を作成して Youtube にアップしてみたりと、TVCM よりもずっと抑えた金額で制作することができます。
ネットなら貴館の広告を適したターゲットに配信することができますし、予算も少額から可能です。代理店に頼むと手数料はかかりますが、それでも外国人観光客が旅行前に、自分たちの国にいるときに、「日本にはこういうミュージアムがあるよ」とアピールできるのですから、他国に先駆けて有利になるでしょう。
弊社としては、もちろんリスティング広告だけでなく、冒頭にご説明した「インバウンドマーケティング」をお薦めいたしますが、どちらの場合もネットによるアプローチが重要です。
理由(その2):ミュージアムで積極的に情報発信している館はまだまだ少ない(ブルーオーシャン)
国内に目を向けた場合でも、ミュージアムで外国人観光客へ積極的にアピールしている館はまだそれほど多くありません。
確かに一部のミュージアムは積極的に情報発信したり、イベントを行って集客していますが、それはほんの一握りです。大規模館でなければ、広報やマーケティング担当者を置いて計画的に発信していくことが難しいのではないでしょうか。
むしろ、どちらかといえば「最近外国人観光客がチラホラ増えてきたから、翻訳しないといけない」という感覚の館の方が多いかもしれません。
※大規模館についてはインバウンドブームに関係なく、もともと世界へ発信しているのでこういう視点にはならないようです。来館者をどうやって満足させるかという「接客」に視点が向いている傾向が強いでしょう。
だからこそ、中小規模館であってもコツコツとマーケティング施策を行なえば、一定の割合で興味のある人たちにアプローチして、しっかりアピールできるということです。
他の業務の妨げにならないように毎日、少しずつ、コツコツとコンテンツを配信していくことが重要です。
理由(その3):ミュージアムはコンテンツが豊富
コンテンツを毎日コツコツ発信していくことが大切だとはいえ、具体的にどんなことを書けばいいのでしょうか。これがまさにミュージアムがインバウンドマーケティングに取り組んだ方がいい理由の大きな部分を占めます。
ミュージアムはそれぞれがとても個性的です。
個性的ということは、それだけほかの館と違うことを発信できるということです。例えば、「○○の博物館」という博物館なら、「○○の歴史」や「○○の素材」などはもちろんのこと、「日本の○○、世界の○○」や「学芸員に聞いた、どうしても○○じゃないとダメな理由」など、テーマの切り口は多種多様です。
またイベントも「○○検定」や「○○クイズ」など、いくらでもアイデアが出すことができます。
作品そのものを無料公開することは困難でも、その周辺情報はいくらでもコンテンツとして作ることができます。
それを Web に少しずつ展開し、SNS で拡散されれば注目度も上がりますし、LP(ランディングページ)を作ったり、動画を作ったり、コストを抑えながらやれることは沢山あります。
例えば、岐阜県美術館様のツイッターなどは、分かりやすく、面白いですよね。
4コマ漫画『ミュージアムの女』から、美術館の仕事が透けて見える
http://grapee.jp/279097
これは面白くてタメになるな! 美術館の監視員が描く4コマ漫画「ミュージアムの女」が話題に
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1701/05/news110.html
これは日本国内だけでなく、海外に向けても翻訳し発信することができますので、「自分たちができること」を棚卸しして、発信していくことで興味を持っている外国人観光客に届けることができます。
また、もっと重要なのが「続けること」です。ネタ切れを起こしてしまうことがないように、常にストックすることと、アイデアを出し続けることです。
ご参考:ネタ切れする前に使いたいアイデアツール紹介
- マンダラート
- マインドマップ
- ブレインストーミング
- KJ 法
- 「なぜなぜ」5回
このようなツールを使用することによって、意外と気づかなかったアイデアが浮かんだりすることありますので、ぜひ試してみてください。
理由(おまけ):すべて貴館の資産になる
インバウンドマーケティング、特にコンテンツを重視する方法は、長期的に見てすべて貴館の資産になるということです。
日本語で書いた原稿も、英語に翻訳したものも、どの言語であってもネット上に存在する限り、検索キーワードにかかるかもしれず(ロングテール)、それがきっかけで貴館に来館するかもしれません。
これはネット社会においては海外、国内問わず効果があることですから、長期になればなるほど、しっかりとしたコンテンツ、それ自身が貴館を宣伝してくれることになります。Web サイトが営業マンのような役割を担ってくれます。
※ただしコンテンツがユーザにとって興味があったり勉強になったりと、役に立つ内容であることが大前提です。
まとめ
インバウンド対策として重要なインバウンドマーケティングがいかに重要な要素かご理解いただけたかと思います。
SEO対策然り、多言語 Web サイトの構築、運用、更新しかり、一朝一夕ではうまく行きませんが、だからこそコツコツと積み重ねることができれば、それは複利的に検索において上位表示の可能性が高まるわけです。
弊社では、インバウンド対策の一環として Web サイトローカライズだけでなく、Web に関する煩わしい一切を代行しておりますので、インバウンドマーケティング、コンテンツマーケティングにご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。
また、ミュージアム専門の外国人観光客集客サービスも合わせてご覧ください。